『無明』の本来の意味
このページでは、『無明』という言葉の本来の意味について、心理学・精神医学の視点から解説します。
『無明』とは?
無明とは、苦痛への過剰な拒絶反応のことです。
つまり、以下のように、自分の知能を制限することで、苦痛を回避しようとする心理的傾向のことです。
- 嫌なことは考えないようにしよう(思考力の制限)
- 嫌だったことは早く忘れよう、思い出さないようにしよう(記憶力の制限)
- 苦痛を感じないようにしよう(感覚の制限)
この心理的傾向が強くなると、知能が低下する結果、精神が不安定となり、様々な病理的な思考や行動(煩悩)を引き起こします。
このような心理的傾向は、精神医学(認知行動療法)の分野では「体験回避」といい、精神疾患の原因になると考えられています。
仏教の経典には、以下のように書かれています。
比丘たちよ、苦に対する無知、苦の集に対する無知、苦の滅に対する無知、苦の滅へ導く道に対する無知。
比丘たちよ、これらを無明という。
本来知るべき苦痛を知ろうとしないことが無明だと分かります。
無明が生み出す悪循環
無明は、以下のようなプロセスで発生し、小さな苦痛が大きな苦痛を招くという悪循環を生み出します。
- 苦痛を感じる。
- 苦痛から逃れたいという欲求が生じる。
- 苦痛が伴う情報を意識から遮断しようとする。
- 脳が本来認知すべき情報を認知できない状態となり、思考力や判断力が低下する。
- 身の回りの問題を合理的に解決できなくなる。
- 身の回りの問題が深刻化し、さらに大きな苦痛を招くという悪循環に陥る。
仏教の経典には、以下のように書かれています。
比丘たちよ、縁起とは何か。
比丘たちよ、無明により行が起こり、行により識が起こり、識により名色が起こり、名色により六処が起こり、六処により触が起こり、触により受が起こり、受により渇愛が起こり、渇愛により取が起こり、取により有が起こり、有により生が起こり、生により老死が、愁悲苦憂悩が生じる。
このようにして、全ての苦蘊は生起する。
難しいことが書いてあるように見えますが、要は、「無明が全ての苦しみを生み出す」ということです。
無明を取り除く瞑想法
どうすれば無明を取り除けるのでしょうか?
無明は、苦痛への過剰な拒絶反応なので、苦痛を正確に感じ取る瞑想法(ペインスキャン瞑想)によって、無明を取り除けます。
仏教の経典には、以下のように書かれています。
我は「是は苦なり」と如実に知見し、「是は苦の集なり」と如実に知見し、「是は苦の滅なり」と如実に知見し、「是は苦の滅に導く道なり」と如実に知見せり。「是等は漏なり」と如実に知見し、「是は漏の集なり」と如実に知見し、「裏は漏の滅なり」と如実に知見し、「是は漏の滅に導く道なり」と如実に知見せり。
我は是の如く知り是の如く見るが故に、心は欲漏より解脱し有漏より解脱し無明漏より解脱して、「解脱に於て解脱せり」の智を生じ、「生は盡きぬ、梵行は修せられたり、爲すべきは爲されたり、更に生を受くる事なし」と知見せり。婆羅門、これ夜の後刻に於て、我、第三の智慧を體得し、無明は去りて明を得、闇は去りて明を得たるなり。
難しいことが書いてあるように見えますが、要は、「苦痛(と煩悩)を正確に感じ取ることによって無明が去った」ということです。
なお、「漏」とは、煩悩のことです。
ペインスキャン瞑想の特徴
ペインスキャン瞑想には、以下のような特徴があります。
- 初心者でも自宅ですぐに実践できること
- 瞑想中だけでなく、日常生活も快適に過ごせるようになること
- 瞑想で精神が安定するしくみまで理解できること
詳しくは、「ペインスキャン瞑想のやり方」のページをご覧ください。