『八正道』の本来の意味

このページでは、『八正道はっしょうどう』という言葉の本来の意味について、心理学・精神医学の視点から解説します。

『八正道』とは?

八正道とは、正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定の八つの道であり、悟りを開く方法が説かれています。
八正道の本来の意味は、以下のとおりです。

  • 正見

    ⇒ 悟りを開く方法、すなわち、瞑想のやり方
    正見とは、「苦を見る瞑想法」を意味します。
    つまり、「自分が今どのような苦痛を感じているのか」「その苦痛がどのように変化していくのか」を観察する瞑想法(ペインスキャン瞑想)を実践すれば、悟りが開けます。
    瞑想の具体的なやり方については、「ペインスキャン瞑想のやり方」のページをご覧ください。

  • 正思惟、正語、正業、正命、正精進

    ⇒ 正見の実践によって、日常生活で得られる効果
    様々な病理的な思考や行動(煩悩)が減少し、思考や行動が自ずと正常化されていきます。
    つまり、正見さえ実践すれば、正しい思考(正思惟)、正しい言動(正語、正業)、正しい生活(正命)、正しい努力(正精進)が自ずと達成されるということです。

  • 正念、正定

    ⇒ 正見の実践によって、瞑想中に得られる効果
    認知能力が飛躍的に向上し(正念)、精神が完全に安定する(正定)、すなわち、悟りが開けるということです。
    この効果は、瞑想後の日常生活でも持続します。

つまり、八正道は、悟りを開く八つの方法ではなく、悟りを開く一つの方法と、それによって得られる七つの効果を説いているのです。

『正見』とは?

正見については、仏教の経典に以下のように書かれています。

比丘たちよ、正見とは何か。
実に比丘たちよ、苦についての智、苦の集起についての智、苦の滅尽についての智、苦の滅尽に至る道についての智を正見とよぶ。

- パーリ仏典 相応部 道相応 無明品

この文章の解釈には争いがありますが、素直に文字どおり解釈すれば、苦痛、苦痛の発生、苦痛の消滅、苦痛の(発生から)消滅までのプロセスを観察することが正見である、という意味になります。
これは、「自分が今どのような苦痛を感じているのか」「その苦痛がどのように変化していくのか」を観察する瞑想法(ペインスキャン瞑想)を実践することが正見である、と言い換えることができます。
瞑想の具体的なやり方については、「ペインスキャン瞑想のやり方」のページをご覧ください。

八正道と因果応報の関係

ここからは、八正道と因果応報が密接な関係にあることを解説します。

因果応報とは?

因果応報は、仏教由来の言葉です。
因果は、縁起や因縁ともいわれます。
因果応報は、現代では「悪いことをすればバチが当たる」という意味で使われることもありますが、それは本来の意味と異なります。
因果応報の本来の意味は、根本的な問題を解決すれば、そこから派生する様々な問題は自ずと解決するので、根本的な問題の解決に集中しなさい、ということです。

諸悪の根源は無明である

そして、人間が抱える根本的な問題は「無明」であり、全ての苦しみの根本原因であるとされています。
仏教の経典には、以下のように書かれています。

比丘たちよ、縁起とは何か。
比丘たちよ、無明により行が起こり、行により識が起こり、識により名色が起こり、名色により六処が起こり、六処により触が起こり、触により受が起こり、受により渇愛が起こり、渇愛により取が起こり、取により有が起こり、有により生が起こり、生により老死が、愁悲苦憂悩が生じる。
このようにして、全ての苦蘊は生起する。

- パーリ仏典 相応部 12-2 分別経

無明とは?

無明とは、苦痛への過剰な拒絶反応のことです。
つまり、以下のように、自分の知能を制限することで、苦痛を回避しようとする心理的傾向のことです。

  • 嫌なことは考えないようにしよう(思考力の制限)
  • 嫌だったことは早く忘れよう、思い出さないようにしよう(記憶力の制限)
  • 苦痛を感じないようにしよう(感覚の制限)

この心理的傾向が強くなると、知能が低下する結果、精神が不安定となり、様々な病理的な思考や行動(煩悩)を引き起こします。
このような心理的傾向は、精神医学(認知行動療法)の分野では「体験回避」といい、精神疾患の原因になると考えられています。
仏教の経典には、以下のように書かれています。

比丘たちよ、苦に対する無知、苦の集に対する無知、苦の滅に対する無知、苦の滅へ導く道に対する無知。
比丘たちよ、これらを無明という。

- パーリ仏典 相応部 道相応 無明品

本来知るべき苦痛を知ろうとしないことが無明だと分かります。

無明と正見の関係

さらに、以下の仏教の経典を照らし合わせれば、無明と正見が表裏の関係をなしていることが分かります。

比丘たちよ、苦に対する無知、苦の集に対する無知、苦の滅に対する無知、苦の滅へ導く道に対する無知。
比丘たちよ、これらを無明という。

- パーリ仏典 相応部 道相応 無明品

比丘たちよ、正見とは何か。
実に比丘たちよ、苦についての智、苦の集起についての智、苦の滅尽についての智、苦の滅尽に至る道についての智を正見とよぶ。

- パーリ仏典 相応部 道相応 無明品

これは、苦痛を正確に感じ取る瞑想法(正見)によって、苦痛への過剰な拒絶反応(無明)を取り除けるということです。

八正道は因果応報そのものである

つまり、正見を実践するだけで、人間が抱える根本的な問題(無明)が取り除かれ、そこから派生する様々な病理的な思考や行動(煩悩)が自ずと減少していく、ということです。
したがって、八正道は、本来の意味での因果応報そのものを説いているといえます。

ペインスキャン瞑想の特徴

ペインスキャン瞑想には、以下のような特徴があります。

  • 初心者でも自宅ですぐに実践できること
  • 瞑想中だけでなく、日常生活も快適に過ごせるようになること
  • 瞑想で精神が安定するしくみまで理解できること

詳しくは、「ペインスキャン瞑想のやり方」のページをご覧ください。

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